ワイシャツのサイズは、あとから直せない寸法に合わせる。

ドレスフォームに着せた白いドレスシャツの衿元。前立ての帯のない前身頃に白蝶貝のボタンが並び、衿腰が立ち上がって衿が自然なロールで折り返っている

首は苦しくない。けれど腕を前に出すと、袖口が手首から離れて時計が丸見えになる。あるいはその逆で、袖の長さはちょうどいいのに、ネクタイを締めると衿が気になって、一日中あごを引いている。一枚のシャツの中に、合っている場所と合っていない場所が同時にある——珍しいことではない。

なぜ一枚のなかで差が出るのか。首、肩から手首まで、胸、胴。シャツはいくつもの寸法でできていて、その一つひとつで、買ったあとに動かせる範囲が違う。動かせる寸法と、動かせない寸法。この違いを知らないまま棚の前に立つから、どこを優先すればいいのかが決まらない。

サイズ表の数字は、首回りと裄丈が組になっている

シャツの衿裏やパッケージに「39-82」と印字されている。この二つの数字が指しているのは、あなたの身体ではない。仕上がったシャツそのものの寸法である。前の39が首回り、後ろの82が裄丈——後ろえりぐりの中央から肩の先を通って袖口までの長さで、いずれもセンチメートルである。日本産業規格 JIS L 4107「一般衣料品」の附属書1「ワイシャツのサイズ」も、サイズを衣料寸法(でき上がりの寸法)として、えり回り(首回り)とゆき(裄丈)の二つで表すことになっている。

目を留めたいのは、その規格の書き方のほうだ。規格は、一つのえり回りに対して裄を幅で示している。ある体型の区分では、えり回り35に対して裄が72から86までの範囲で並ぶ。首の太さと腕の長さは、規格の上では連動していない。加えて規格には体型の区分そのものが用意されていて、同じえり回りでも胴の寸法が違う型が別に立っている。

ところが日本の売り場に並ぶ既製のシャツは、この幅を固定の組に絞っている。37-80、39-82、41-84、43-86。二センチずつ、首と裄が足並みをそろえて増えていく。刻み方はつくり手によって違い、一センチずつ動かす体系や、小数点を含む体系もあるが、組になっている点は変わらない。棚から選ぶとき、私たちは寸法を選んでいるのではない。あらかじめ用意された組を選んでいる。

だから、自分の寸法の組が売り場に無い、ということが起こる。首が細くて腕が長い人。首が太くて腕が短い人。規格の幅の中には収まっている組み合わせが、棚には並んでいない。合わないのは身体の側の事情ではなく、寸法が組で供給されているという仕組みの帰結である。

ここで扱うのは、仕事で毎日袖を通す、仕事着としてのシャツの寸法である。就職活動のための一枚、学生服、和装の寸法、女性向けの寸法は、決め方の前提そのものが違うので触れない。

寸法には、あとから直せるものと直せないものがある

仕立て台に置かれた白いシャツの袖と、外されたカフス。糸切り鋏と待ち針が脇に並ぶ

ここから順序の話に入る。どの寸法を先に合わせるかは、好みや流儀の問題ではない。直せるかどうかという事実から決まる。

首回りは、買ったあとには直せないものと考えたほうがいい。衿は身頃と一体で仕立てられていて、小売の直しの範囲で作り替えられるものではない。合わなければ、その一枚とは付き合えない。

袖の長さは直せる。カフスを外して縫い直せば詰まる。ただし詰める方向にしか動かない。生地が無い以上、短いものを伸ばすことはできない。

胴回りも直せるが、こちらも片方向である。余っている分を詰めることはできて、足りない分を出すことはできない。

三つを並べれば、順序はおのずと決まる。まず直せない首回りを合わせる。次に、片方向にしか直せない胴回りを見る。詰めれば済む袖の長さは、最後でいい。あとから直せない寸法に合わせる、というのはそういう意味である。

直せるものと直せないものに分けて判断するという軸そのものは、革靴で靴の寿命を見分けるときにも書いた。直る傷みか、直らない傷みか。対象が靴から寸法に変わっても、当社が装いを判断するときの物差しは変わらない。

ただし以下の説明は、表示に出ている首回りと袖から始める。胴回りは表示に出てこないぶん見落とされやすいので、そのあとに独立して扱う。

首回りは、ネクタイを結んだ状態で決める

濃紺の無地ネクタイを結んだ白いシャツの衿元。結び目が衿羽根のあいだに収まり、衿と首のあいだに隙間がない

では首回りをどこに合わせるか。私の基準は、首の実寸に一センチから一・五センチを足したところである。第一ボタンを留めて、首と衿のあいだに指が一本すべり込む。それ以上でも、それ以下でもない。

売り場で示されている目安は、これより一センチほど緩いことが多い。実寸に二から三センチ、という説明をよく見かける。指の本数についても、二本とするものと一本とするものがあって、揃っていない。数字が割れているのは、測っている状態が違うからだと私は考えている。私が基準にしているのは、ネクタイを結んで、結び目が衿のあいだに収まった状態である。結んだ瞬間、衿は首に引き寄せられ、余りは行き場を失う。そこで初めて、ゆとりが多すぎたかどうかが分かる。

緩すぎるとどう見えるか。衿は顔のすぐ下にあって、相手の視線が最も長く留まる場所である。シャツの本質で、衿は顔の額縁だと書いた。その額縁と首のあいだが空いていると、結んだはずのネクタイの下に影ができる。首と衿のあいだに残った余りは、ゆとりとしてではなく、隙として読まれる。

きつすぎる側も、同じくらい良くない。首は呼吸と発声の通り道である。締めつけられていれば、あごが上がるか、逆に引きすぎるか、どちらかの癖が出る。着ている本人が余裕を失えば、それは表情に出る。

ネクタイを結んだときに、首回りに吸い付くようなサイズ感。言葉にすればそれだけのことで、締めてみれば身体が答えを教えてくれる。そもそも表示された寸法と仕上がりの寸法のあいだには、規格の上でも差が認められている。えり回りは表示より0.5センチ小さい側から0.8センチ大きい側まで、ゆき(裄)は前後1.0センチまでが許容の範囲である。数字で決めきらず、締めた状態で確かめたほうがいい理由が、ここにもある。

袖は、長さしか直せない

チャコールグレーの上着の袖口から、白いシャツの袖口が一センチほど覗いている手首まわり

裄丈は、腕そのものの長さではない。背中の一点を起点にした寸法である。だから同じ身長でも、肩幅や姿勢によって変わってくる。

目安は、腕を自然に下ろしたときに袖口が手首の骨まで届き、上着を羽織れば、その袖口からシャツが一センチから一・五センチほど覗くところにある。腕を前に出したときに手首が露出しきってしまうなら短い。手の甲に生地がかぶさるようなら長い。

同じことが背中側にもいえる。上着の後ろ襟の上に立ち上がるシャツの衿も、同じだけ見えているのがいい。前と後ろで覗く量がそろったとき、上着とシャツは二枚ではなく一つの姿として目に入る。

長さについては、冒頭の順序がそのまま当てはまる。二つの組で迷ったときは、袖の長いほうを取る。長い分は詰められるが、短い分はどうにもならないからだ。首回りが合っていて袖だけが長い一枚は、直せば自分の一枚になる。首回りが合わない一枚は、袖の長さがどれだけ完璧でも、自分の一枚にはならない。

ただし、直せるのは長さだけである。袖の太さ——腕の周りと、袖口のカフス周り——は、多くの場合、既製品の直しでは対応できず、寸法を指定して仕立てる領域になる。この二つは「直す寸法」ではなく「選ぶ寸法」であり、既製のシャツでは、その組に与えられた太さをそのまま受け取ることになる。

袖は、長さは直せるのに太さは直せないという、非対称を抱えた部位である。既製品の限界が最もはっきり出るのがここで、このあと触れる「棚に自分の組が無い」という状態も、袖から先に現れることが多い。腕の周りとカフスをどう選ぶかは、それだけで一つの主題になるので、本稿では立ち入らない。

胴回りも、合わせに行く

パンツに入れた白いシャツの腰まわり。シャツの前立てとパンツの前立てが一本の縦線に揃い、余った布が全周に均等に散っている

首と裄丈の二つだけで選び切ってしまう人は多い。表示がその二つでできている以上、無理もない。けれど着姿を崩しているのは、たいてい胸と胴のほうである。

私が最初に見るのは、シャツをパンツに入れた状態で、腰の周りに余っている生地の分量である。前と後ろ、左と右で、その余りが均等に散っているかどうか。均等であれば、布はどの一点にも寄らない。寄らなければ折り目も膨らみも立たないので、多少の余りは着姿に出ない。どこか一箇所に寄っていれば、寸法が身体に対して大きいか、あるいは形が合っていない。

きつい側の兆候は、前に出る。前立てがねじれる。ボタンとボタンのあいだが、座ったり腕を動かしたりするたびに開く。緩い側の兆候は、横と後ろに出る。脇に袋のような膨らみができ、背中に生地が余る。ベルトの上に生地が戻ってきて、裾が抜けやすくなる。腕を下ろしたときの身体の輪郭が、実際より一回り大きく見えることもある。

見落とされやすいのは、上着を脱いだとたんに、これが全部表に出るということだ。執務中も、画面越しの会議も、上着を着ていない時間のほうが長い。そのあいだ、身体に沿う面積が最も広い衣類はシャツである。余った布は、どこかに形となって現れる。

だから胴回りも、直せる範囲を当てにせずに合わせに行く。詰める直しはできるが、それは余りを引き受ける作業であって、足りないものを生む作業ではない。規格が体型の区分を持っているのも、首の太さだけでは身体が決まらないからである。

測るのは、昼過ぎから夕方までのあいだに

首回りは直せない寸法だから、決めるときの条件のほうもそろえておきたい。同じ身体でも、朝と夜とでは首回りの出方が変わる。

私は採寸の場で、昼過ぎから夕方にかけての時間帯を目安にしてきた。おおよそ十三時から十六時のあいだである。

理由は身体の状態にあると私は見ている。朝は、横になって過ごした時間の直後にあたる。水分が全身に均等に巡りやすいためか、首回りはこの時間帯に太く出やすい。反対に、立って動いて過ごすうちに、水分は下半身の側へ寄っていく。夕方から夜にかけて測れば、朝とは逆の方向に振れることになる。

だから一日の両端を避けて、その中間にあたる時間に測る。どれくらい動くかを数字で示すつもりはない。身体の状態は人によっても日によっても違う。ただ、朝いちばんの数字と一日の終わりの数字のどちらか一方を信じて一枚を決めるより、その中間で測ったほうが外れは小さい。採寸に長く立ち会ってきた実感として、そう言える。

条件をそろえておきたいのは、直せない寸法を、たった一度の計測で決めることになるからである。

洗って縮む分を、先に見込まない

綿は洗うと縮む。ではその分を見込んで、少し大きめを買っておけばいいのか。私はその買い方を採らない。

縮んだあとの寸法を、買う時点で言い当てられないからである。縮み方は生地の織り方や糸の性質で変わり、仕立てでも変わり、洗い方と乾かし方でも変わる。読めないものを見込んで買えば、思ったほど縮まなかったときに、大きいシャツだけが手元に残る。そして首回りが一センチ緩い一枚は、直せない。

では何をするか。まず、買う時点で合っているものを買う。そのうえで、店で縮みについて確認しておく。尋ねるのは、洗ったあとにどの程度縮むか、そしてその数字が水通しを済ませた状態のものかどうか。生地をあらかじめ縮ませてから裁っているかどうかで、その後の動き方が変わる。

最後に、実際に一度洗って自分の目で確かめる。店に聞いて確かめられるのは、その生地が水通しを済ませているかどうかという事実までで、自分の一枚が実際にどれだけ動くかは、自分の洗濯機を通した結果のほうが当てになる。同じつくり手の同じ型なら、二枚目からは自分の実測を持って選べるようになる。

組が見つからないときは、探すか、仕立てるか

仕立て台に並べた白いシャツ地の反物と、巻かれた無地の綿テープ

ここまでの順序を踏んでも、既製の棚に自分の組が無いことはある。冒頭に挙げた首と腕の組み合わせだけではない。胸に対して胴が細い。腕が太くて、長さは合っているのに袖が窮屈。どれも規格が想定する幅の内側にありながら、売り場には並んでいない。

道は二つある。

一つは、刻みの違うつくり手を探すこと。固定の組の作り方は、つくり手ごとに違う。二センチ刻みで動かす体系もあれば、一センチ刻みの体系もあり、体型の区分の持ち方も同じではない。あるつくり手の棚に無い組が、別のつくり手の棚には並んでいることがある。試着を重ねる価値は十分にある。

もう一つは、寸法を指定して仕立てること。首も裄も胴も、そして袖の太さも、自分の数字で決められる。袖のところで触れたとおり、袖の太さは既製の直しでは動かしにくい寸法である。ここが合わないという自覚があるなら、探す側の道は細くなる。

どちらを選ぶかは、着る枚数と頻度で決めるのがよい。判断の軸は金額ではなく、時間である。年に一枚か二枚でよいのなら、根気強く探して見つける楽しみがある。一方、毎日シャツを着て、洗い替えを含めて何枚も必要な人にとっては、探し続けることに費やす時間のほうが、先に尽きる。休日を売り場に費やして毎回外すくらいなら、一度、自分の寸法を確定させたほうが早い。

そして寸法が一度決まれば、その後はずっと使える。身体が変われば、測り直せばいい。

まとめ:直せない寸法から順に合わせれば、シャツは身体に付いてくる

シャツの寸法には、直せるものと直せないものがある。首回りは直せないから最初に合わせる。ネクタイを結んだ状態で、首に吸い付くところ。胴回りは片方向にしか直せないから、シャツをパンツに入れて、余りの散り方を見る。袖の長さは詰められるから最後でいい。迷ったら長いほうを取る。測るのは昼過ぎから夕方のあいだ。縮む分は先に見込まず、買ったあとに自分で確かめる。それでも自分の組が無ければ、探すか、仕立てるか——着る枚数と頻度で決める。

表示された二つの数字は、身体を要約したものではない。棚に並べるために、つくり手が幅の中から選んだ組み合わせにすぎない。その事情を知っていれば、合わない一枚を前にして自分の身体を疑わずに済む。

シャツは、身体に付いてくると静かになる。首が気にならず、腕を動かしても袖口が居場所を変えず、上着を脱いでも姿が崩れない。何も主張しなくなったとき、その一枚はようやく仕事の道具になる。

纏う自信が、勝負を制する。

よくある質問

ワイシャツのサイズ表示にある「41-80」のような数字は、何を指していますか?

前の数字が首回り、後ろの数字が裄丈(後ろえりぐりの中央、つまり首の後ろの付け根から、肩の先を通って袖口までの長さ)を、それぞれセンチメートルで示しています。いずれも身体の寸法ではなく、仕上がったシャツそのものの寸法です。既製のシャツは、この二つをあらかじめ決まった組み合わせにして展開しているため、選ぶときは片方の数字だけを見るのではなく、二つの組として見ることになります。

首回りと裄丈が同時に合いません。どちらを優先すればよいですか?

首回りを優先してください。首回りは購入後に直せませんが、袖の長さはカフスを外して詰めることができるためです。二つの組で迷ったときは、袖が長いほうを選んで、あとから詰めるという順序になります。

首回り37・裄丈78のような組み合わせが、売り場で見つからないのはなぜですか?

既製のシャツが、首回りと裄丈をあらかじめ決まった組にして展開しているためです。日本産業規格(JIS L 4107 附属書1「ワイシャツのサイズ」)では、一つの首回り(規格の表記では「えり回り」)に対して裄が幅で示されていますが、売り場に並ぶ商品はその幅を固定の組に絞っています。首が細くて腕が長い、首が太くて腕が短いといった身体には、その組が用意されていないことがあります。合わないのは身体の側ではなく、用意されている組の側に自分の寸法が無いということです。刻みの異なるつくり手を探すか、寸法を指定して仕立てるという二つの道があります。

ワイシャツのサイズを測るのに、適した時間帯はありますか?

私は採寸の場で、昼過ぎから夕方にかけて——目安としては十三時から十六時のあいだを基準にしてきました。朝は横になって過ごした時間の直後にあたり、首回りが太く出やすい。夕方から夜にかけては、逆の方向に振れます。朝いちばんの数字と一日の終わりの数字のどちらか一方で一枚を決めるより、その中間で測ったほうが外れは小さい——採寸に長く立ち会ってきた実感として、そう申し上げています。どの程度動くかは人によっても日によっても異なるため、数値では示していません。

洗濯で縮むぶんを見込んで、大きめを買ったほうがよいですか?

おすすめしません。縮み方は生地や仕立て、洗い方によって変わるため、縮んだあとの寸法を買う時点で言い当てることができないからです。購入時に合っているものを選び、縮みについては洗濯後にどの程度縮むか、その数字が水通しを済ませた状態のものかどうかを店で確認したうえで、実際に一度洗って自分で確かめるのが確実です。

出典:日本産業規格 JIS L 4107「一般衣料品」附属書1「ワイシャツのサイズ」(えり回りとゆきによる寸法表示、体型の区分、仕上がり寸法の許容差)

Author

Shogo Otomo

グローバル企業の上級幹部として世界基準の交渉・意思決定の場に立ちながら、自らも会社を経営し、経営判断の場に身を置く。国際的なイメージコンサルタント業界団体の知識体系を学び、長年にわたり経営者・役員・管理職・若手ビジネスパーソンの装いを支援。クラシコイタリアと縁の深いラグジュアリー・セレクトショップ出身。ブランドより素材・仕立てを重視する。