オーダースーツ(order suit) - メンズファッションペディア

オーダースーツ(order suit)の基本

オーダースーツの基本


「なんだ、このオトコ… 仕上がってるな…」

あなたも日々ビジネスをしている中で、相手の見た目(印象)に、一度は思った経験がきっとあるだろう。

その原因は、そのオトコが身に纏っているスーツが、レディ・メイド(既成品)ではなく、オーダー・メイド(注文品)であることが一因している可能性が高い。

既成品では、各アパレルブランドがターゲットとする成人男性の身体サイズの最大公約数的なサイズで仕立てられ、その時点でのトレンドを施したディテールデザイン(細部の仕様)のため、なかなか”仕上がった”印象を持たせることは難しい。そして、トレンドが反映されるが故に、長く着用することが難しい。

一方で注文品では、あなたの身体サイズをベースに、あなたの好みのディテールでオーダーできるため、長く着用することができる。何より、”仕上がった”オトコに近づけるのである。

この記事では、オーダースーツの基本を紹介しよう。これまでスーツをオーダーしたことがない人や、過去に失敗した人には、多少敷居が高く感じられるかもしれないが、一度オーダースーツの基本を理解できれば、その魅力の虜になるだろう。そう、誰にでも初めてや失敗はあるのだから…

 

1.オーダースーツとは

オーダースーツとは、文字通り「注文(オーダー)する」「背広(スーツ)」である。(背広という人はもういないか…)


別の言い方をすると、「既製服」と「注文服」の違いであり、スーツの作り方によって大別される。

◇オーダー・メイド
身体の採寸を行い、体型に合わせて仕立てられたスーツ。
イギリスでは「ビスポーク(be spoke)」と呼ばれ、顧客の要望をテーラーが聞きながら仕立てる意味だ。

イタリアでは「ス・ミズーラ(su misura)」と呼ばれ、「あなたのサイズに合わせて」仕立てる意味だ。

更にオーダー・メイドは、マシン・メイド(機械で作られたもの)とハンド・メイド(職人の手で作られたもの)に分けることができる。

◇レディ・メイド
いわゆる普段アパレルショップで見かけるハンガーにかけてあって、直ぐに購入可能な吊るしのスーツ。フランス語ではプレタポルテ(※高級既製服という意味合いが強い)。

 

2.スーツをオーダーするべき理由

奥が非常に深いからである。メンズファッション、特にスーツには着用のルールが存在する。既成品では、すべてのルールをクリアすることは難しい。クリアできなかったルールが、そのまま”隙”となる。隙があっては、”仕上がれない”。具体的には、レディ・メイドとオーダー・メイドでは、変数の数が圧倒的に違う。できれば、若いうちからたくさんのスーツを作っていってほしい。成功や失敗の経験を通して、自分に合った好みのスーツを手に入れていくべきだ。


一般的に既成品は、「修理」という概念で、ディテール部分を変更していく。たとえば、あなたもスーツジャケットの袖丈や、スラックス(パンツ)の裾丈を調整したことがあると思うが、すべて既製で用意されたものを「修理」していく行為だ。すでに型が決まっているがゆえに、胸回りや、肩周りなど、スーツを魅力的に着用する上で重要な箇所の修理は、たいていの場合、全体デザインのバランスが崩れてしまうため、敬遠されることが多い。(まったくに修理できないわけではないが。)

また、既成品は往々にして、トレンドの要素が強い。例えば、ボタンの数、着丈の長さ、ゴージラインの高さ、ポケットの位置/形状など、取り上げるとキリがないくらいの変数を擁しており、その時代のトレンドに合わせて様々だ。時が経つにつれ、古びた印象を持ってしまうだろう。

最近では、既成品でもクラシックライン等と呼ばれる、トレンドに左右されない、そのお店で殿堂入りしているデザインもあるようだが、結局は変数が少ない。否定するわけではないが、身体にしっかりと合ったスーツを見つけるのは難しいだろう。

一方で注文服は、あなたの身体がベースとなる。サイズはもちろん、あなた体のクセ(例えば、左右の腕の長さの違い、なで肩、いかり型、猫背など)も加味して、「補正」していく。スーツは、男性らしい直線的で逆三角形的な身体のラインを構築/追求していくことが理想だ。採寸の過程や、実作の過程では、あなたの体のクセも魅力に変えるような、様々な「補正」が施される。ワタシもスーツ工場の見学に行ったが、実際に驚くほど数多くの補正マニュアルが存在していた!

 

3.【事前準備編】スーツをオーダーする前のポイント

実際にオーダースーツを仕立ててくれるお店に行くと、目移りする。ワタシは正直今でも目移りして衝動買いしてしまう。衝動買いが悪いものとは言わないが、せっかくオーダースーツを仕立てるのであれば、ある程度の事前準備をしていったほうが懸命だろう。


◇オーダースーツを仕立てる目的を考える

何のためにオーダースーツを仕立てるのか。TPO(Time,Place, Occasion:いつ、どこで、なにを着る)で考えても良いし、FOB(Formal,Official,Private:礼服、ビジネス、カジュアル)なのか。もっとわかりやすく言うと、季節が変わったからなのか。身体のサイズが変わってしまったからなのか。ここを考えたほうが良い。ここがブレると、お店でもブレる。スーツもブレる。


◇現在手持ちのあなたのワードローブ(あなたが持っている衣装のすべて。衣装ダンスではない!)を把握する

あなたのクローゼットの中に入っている、スーツ/ドレスシャツ/ネクタイ/チーフを把握してほしい。理由を纏めた。


・スーツ

数が少ない頃は発生しないが、同じような生地、柄のものを買ってしまうことを避けるため。


・ドレスシャツ

スーツに合わないドレスシャツは存在する。スーツだけ先行して購入し、合うドレスシャツがなかった時は悲しいだろう。


・ネクタイ

スーツに合わないネクタイは存在する。スーツだけ先行して購入し、ノータイで全て乗りきれるほど甘い世の中ではない。


・チーフ

スーツに合わないチーフは存在する。まれに信じられない”合わせ”をしている人に遭遇する。(”ハズし”なのか…?)


◇スーツ/シャツ/ベルト/ドレスシューズ(革靴)のお気に入りポイントを纏めておく

自分の身体のサイズを熟知するまでは、お気に入りのポイントを纏めておくことが大事だ。実際にお店に行ってオーダースーツを仕立てる際に、非常に役に立つ。


◇どんなスーツをオーダーしたいか、イメージをふくらませる

ファッション誌の切り抜きでもコピーでも何でも良い、イメージが伝わるものを用意しよう。ノーアイデアで行くのは避けたい。(お店のテーラーに時間があればよいが、彼らも顧客を回転させないと行けないのだから!)例えば、「こんな感じの色み/柄の生地で作りたい」や「こんな感じのサイズ感で作りたい」など、具体性を持つことが大事だ。

 

4.【実践編】スーツをオーダーする際のポイント

さて、最初は緊張すると思うが、実際にオーダースーツを仕立ててくれるお店の門戸を開こう。入ってみると、それなりにクラス感を感じていると、テーラーが気持よく出迎えてくれるだろう。さぁ、オーダースーツの始まりだ。ここで大事なポイントを以下に纏めておこう。


◇お気に入りのスーツ/ドレスシャツ/ベルト/ドレスシューズ(革靴)を必ず持って行く(着て行ったほうが楽だ。)

テーラーと一緒にスーツを作り上げていくのだが、採寸(メジャーリング)する際に、あなたが普段どのようなスタイリングを好むのか、伝わりやすい。更に、誤ったスタイリングをしている際は、アドバイスしてくれるだろう。恥ずかしがっては駄目だ。テーラーはそんな人をいつも相手にしている。安心してアドバイスを受け入れよう。私服で来店して、テンパっている人を見かけるが、なれるまでは私服で行かないほうが良い。ワタシは私服の場合でも、ドレスシャツ、ベルト、ドレスシューズは持参する。なぜ大事なのかは、以下のポイントを見れば明白だ。


・ジャケットの袖丈

自然体で腕をおろした際、袖から1.5cm前後ドレスシャツの袖が出ているのが理想だが、普段来ているドレスシャツを着用することで非常にスムーズになる。逆に、ドレスシャツがないと、親指の先端から何cm上の部分に袖先を持ってくるかを決めるのだが、「1.5cm前後」という鬼のルールを守ることは難しくなる。


・ジャケットの上衿の高さ

ジャケットを着用した際に首の後ろに来る襟をカラーという。ここにもルールが有り、またも1.5cmだ。この高さも、ドレスシャツを着用した上で図らないとルールを守ることは難しい。よく台襟の高いドレスシャツを着用し、スーツのカラーからこれでもかとドレスシャツの襟の存在をアピール(出ちゃってる?)している人を見かけるが、正直首が短く、まるでコルセットをつけているかのように見えて滑稽だ。


・スラックスの股上(ライズ)

股上(ライズ)の深さを決める際の決め手となる。あなたが普段着用しているベルトをオーダーの際も着用することで、普段の腰の位置がわかり、適切な股上(ライズ)に仕上げることができる。浅すぎると、小学生の時にズボンだけを持ち上げられて恥ずかしい思いをしたことを思い出してしまうし。深すぎると、腰履きしてないのに腰履きしてしまっているかのように見えて、エレガントではない。


・スラックスの裾の仕上げ

スラックスの裾は、大きく裾丈と裾口幅に大別できる。(細かい話をすると、ヒザ幅やふくらはぎ幅、O脚やX脚の補正もあるが)普段着用しているドレスシューズ(革靴)を着用することで、適正な裾丈と裾口幅に仕上げることができる。適正と言っているのは、鬼のルールは存在せず、長め、短め、細め、太め等、好みや体型に合わせて適正値が異なるからだ。


◇わからないことはどんどん聞く

文字通り、どんどん聞こう。テーラーとの会話が多ければ多いほど、あなたのイメージに近づくと考えて良いし、あなたのオーダースーツの経験値が貯まる。また、重要なポイントを纏めた。


・自分の体のクセを聞く

マネキン(トルソー)のような身体を持っている人は殆どいないと言っても過言ではない。クセは誰にでもある。自分のクセを思い切って聞いてみよう。今後オーダースーツを仕立てる際に役に立つ。また、聞くことでクセに応じた補正を施すことができる。


・見た目にどんな効果が得られるのかを聞く

デザイン/シルエットを決定していく際、どのような効果(見た目、機能面、着心地等)を得られるのか聞くことが非常に大事だ。事前準備でイメージした見た目に近づいているのか、いないのか、確認する義務はあなたにある。ここを聞かずに、イメージ通りにならなかった人をたくさん見てきた。


◇受け取りの際にもお気に入りのドレスシャツ/ベルト/ドレスシューズ(革靴)を必ず持って行く(くどいが着て行ったほうが楽。)

受け取りの際にも、ドレスシャツ/ベルト/ドレスシューズ(革靴)を着用した上で、仕上がったスーツを着用しよう。実際に着用するのと同条件で纏うことで、細かく気になる点を確認しよう。ここで気を抜く事のないように。

 

5.オーダーの流れ

だいぶイメージが湧いてきただろうか。それでは、実際のオーダーの流れをまとめよう。オーダースーツの制作工程を見ではなく、あくまで入店してからあなたがどのような流れでオーダーを進めていくのかを確認する。これで緊張も緩和されるはずだ。お店によって異なるかもしれないが、概ねこの流れだと思って頂いて問題はない。


@生地を選ぶ

お店にディスプレイされた、膨大な数の生地の中から、イメージに近い生地を選ぶ。事前にイメージがあるかないかで、大幅に所要時間が変わってくる。できればイメージを伝えて、テーラーから提案を受けたほうが良い。


Aスタイルを選ぶ

デザインやシルエットの好みを伝えて、スタイルを決めていく。フルオーダーの場合は、基本的に好みをどんどん伝えていけばOKだ。お店によってはモデル(ブリティッシュモデルや、クラシコ・イタリアモデル等)が用意されていて、そこから選ぶケースもあるだろう。


B採寸(メジャーリング)される

採寸と言っても、身体の寸法を測るだけではなく、体型の把握(身体のクセの把握)も行う。鏡の前に立ち、テーラーに測ってもらうのだ。オーダースーツといって浮かぶイメージに一番近いかもしれない。パターンオーダーの場合は、ここでサイズサンプル(サイズゲージ)を着用して、細かな補正作業に入っていく。


Cディテールを決める

ボタン、裏地が基本だが、ステッチ(縫い方)、ジャケットの袖口仕上げ(本切羽等)、スラックスの裾仕上げ(シングル、ダブル、モーニング)等、細かな仕様を決めていく。ここが面白い。自分だけの誂え品が仕上がってくる。ただし、ここでもまた、どんなイメージにしたいかが大事だ。テーラーと語らいながら、しっかり考えて決めてほしい。オプション料金がかかるものもあると思うので、確認が必要だ。


D仮縫い

日を改めて、裁断された生地と芯地を仮縫い状態で着用し、より身体にフィットさせていく補正を行う。着心地を左右する大事な作業である。お店によっては何度か仮縫いを行ってくれる。


E受け取り/br>

いよいよ受け取りだ。先にも説明済みだが、お気に入りのドレスシャツ/ベルト/ドレスシューズ(革靴)着用した上で、必ず仕上がったスーツを着用して、細かい点を確認する。どうしても気になるところは素直に要望してみれば、たいていのお店は改めて調整をかけてくれる。
気を抜いては駄目だ。

 

6.【事後編】スーツをオーダーし、受け取った後のポイント

待ちに待ったオーダースーツがようやく手に入り、気持ちが高まっているだろう。しかし、まだ終わらない。ポイントは以下だ。


◇実際に着用回数を重ねることで気になる点を、メモにまとめよう。

一度オーダースーツを仕立てたからといって、それで終わりではない。特に、最初の一着では、経験不足による改善点が出てくるものである。オーダースーツを実際のビジネスの場で着用する機会が増えてくると、細かいところが気になり始める。もうちょっとここを弄りたいというニーズが発生してくるのだ。思い立ったが吉日、メモにまとめて、次回のオーダーの際に、改めてテーラーに伝えよう。なお、どうしても気になるところは、修理費を支払ってでも修理したほうが良いだろう。あなたは”仕上がってる印象”を相手に与える必要があるからだ。通常、あなたがオーダースーツを作ったお店は、あなたの型紙/サイズデータを保管している。次はここをもう少し太く、補足、長く、短くとディテールを突き詰めていくことで、あなたはどんどん仕上がっていく。どんどんハマっていってほしい。

 

まとめ:オーダースーツの基本

過去の歴史を振り返ると、スーツを仕立てる際、マシン・メイドによる大量生産ができなかった時代は、ハンド・メイドによる少量生産だった。昔のオトコたちは、当然のようにスーツをオーダーしていたのである。また、近年ではクールビスの推進やIT関連企業の台頭により、ビジネスにおけるメンズファッションのカジュアル化が進んでいる。その時流の中で、自分だけのこだわりが反映できるオーダースーツが市民権を得始めてきているようだ。実際に、ワタシが足繁く通っている銀座では、新しいオーダースーツのお店がたくさん出来ている。昔ながらのお店と比較すると、価格も非常に安い。3万円前後(初回は更に安い場合もある!)でオーダースーツの世界門戸をくぐることができるのだ。この状況は、これまでのあなたのスーツのイメージを刷新するチャンスである。


しかし、この記事を読んでいるだけでは、オーダースーツを身に纏うことはできない。さぁ、まずは一度スーツをオーダーしてみよう。

ダイエットの本を読んでも痩せることができないように、まず行動を起こしてみることが肝要だ。

 


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